例会報告 |
第66回「ノホホンの会」報告 2017年4月18日(火)午後3時~午後5時(会場:三鷹SOHOパイロットオフィス会議室、参加者:狸吉、致智望、山勘、恵比寿っさん、ジョンレノ・ホツマ、本屋学問) 今回は全員が参加でき、いつもながらの熱い議論になりました。今回も経済を論じる本の紹介が目立ちました。突然アメリカに現われた変人指導者、北朝鮮問題、国際テロ…、世界も日本も有効な対策のないまま“茹で蛙”状態になっています。ミサイルが飛んできたときの対処法がマスコミで紹介されるなど、平和ボケの日本にもようやく国際情勢の現実が迫ってきて、呑気にオリンピックなどやっている場合ではないでしょう。 (今月の書感) 「日本がやばい」(致智望)/「EU分裂と世界経済危機─イギリス離脱は何をもたらすか」(恵比寿っさん)/「財務省と大新聞が隠す 本当は世界一の日本経済」(山勘)/「鉄道忌避伝説の謎─汽車が来た町。来なかった町」(狸吉)/「音楽の歴史(改訳)」(本屋学問)/「絢爛たる悪運 岸信介伝」(ジョンレノ・ホツマ) (今月のネットエッセイ) 「人間の「賞味期限」と「消費期限」」(山勘)
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書 感 |
日本がやばい/クルーグマン教授の緊急提言(プレジデント誌)
本書感は、雑誌「プレジデント」誌の記事からの読書感である、本記事を敢えて取り上げたのは、直近の情勢にミートした時事問題であり、大きな興味をそそられ、敢えて書感として取りあげ諸氏に紹介したかった。 本雑誌記事は、ノーベル賞経済学者のクルーグマン教授へのプレジデント誌の独占取材に答えたものである。 ドナルド・トランプが大統領に選ばれ、米国内メディアからは民主制の病弊が言われていることに付いて。民主制の基盤崩壊は、既に何十年も前から続いており、これから回復できる保証はない。トランプ氏の就任演説の全文を読んで、その恐怖はさらに大きくなった。 「アメリカ ファースト」と言う言葉であるが、彼が歴史事実を知っていたのか意図的に知らないふりをしているのか、このフレーズはナチス擁護者たちのスローガンであった、と言う暗い歴史があるフレーズだ。残念なことに、そんな危険な人物に巨大な権力を我々は与えてしまった。
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EU分裂と世界経済危機─イギリス離脱は何をもたらすか/伊藤さゆり(NHK出版新書 2016年10月10日第一刷発行 本体740円) いとう・さゆり 専門は欧州経済。 早稲田政治経済学部卒業後、日本勧業銀行(現みずほ銀行)調査部シニアエコノミストなどを経て現職。 その間、早大大学院商学研究科修士課程修了。 経済紙への寄稿のほか、NHKなどでのテレビ解説も多数。 著書に『現代ヨーロッパ経済論』(共著、ミネルバ書房)など。
本書関係地図 はじめに 英EU離脱の深層 世界経済は再び危機を迎えるのか EU分裂はさらに進むのか 日本には何ができるのか 終章 英国とEUはどこへ向かうのか あとがき 参考文献 EUと英国の略年表 主な欧文略語一覧
終章で、著者は「不確実性の高い局面の始まり」と述べ、英国新政権の課題や英国分裂の可能性を論じるととともに、スコットランドの課題や日本に求められる構造改革と日本の行政府に耳の痛いことまで触れています。
例えばドイツは、経済的に強大化したが、EUの覇権国としての責任を負うことを拒否してきたが、今のままではEU内の亀裂は広がるばかりで、ドイツの嫌うECBの金融緩和は、ユーロ制度の欠陥を補う唯一の選択肢という性格があり(ここ、理解できない)、金融政策に過剰な負荷がかかっている状況を脱するためにも、財政ルールの運用を柔軟にすべきと提言している。
あ 独・仏も政治的新興勢力の台頭があるが、主流派を上回るところまでは至っていない。
帯に「本当の危機はこれからやってくる!」とありますが、これは出版社の売らんがためのキャッチで、ここまで著者は言いきっていません。
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財務省と大新聞が隠す 本当は世界一の日本経済/上念 司(講談社 本体880円)
まえがきで、「なぜ彼らは700兆円の政府資産を隠すのか」と言う。彼らとは、財務省や日銀、それに追随する大新聞である。日本政府は1000兆円の借金を抱えており、国民一人当たりにすると830万円になる、などと言われている。しかし実際には、日本政府は700兆円の資産を持っている。しかもその資産は、換金のむずかしいインフラ資産だけではなく、「現金・預金」「有価証券」特殊法人への「貸付金」「出資金」などの金融資産だけでざっと300兆円以上あると筆者は指摘する。これは経済規模4倍のアメリカの政府資産150兆円に比べれば、その優位性が明らかである。 |
鉄道忌避伝説の謎─汽車が来た町。来なかった町/青木栄一(歴史文化ライブラリー 2006年 本体1,700円) 「昔鉄道開業の頃、今までの商売がダメになると言って、鉄道が来るのに反対した。今では鉄道から離れた不便な場所になってしまったが、昔の人たちの先見の無さだ」という話は日本の各地で聞く。
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絢爛たる悪運 岸信介伝/工藤美代子(幻冬舎 2012年9月発行)
現首相の安倍晋三は岸信介の孫に当たり、取り巻きを見ると、今の時点だけでなく、ずぅーと繋がっていたんだと改めて認識した次第です。
本書により、戦時中のことは知る由もなかったことも、また戦後の政治の歴史についても、政治家の関わり合いや動きの展開がまるで舞台を見ているような感じでした。あまりにも何も知らなかったことを認識いたしました。いろいろな人名や地名が登場し興味をもったものの、生には難しい用語が多々あり一遍読んだだけではよく理解できないということが分かりました。
幾つかのみ抜粋します。
東条内閣を倒したことからA級戦犯容疑者から不起訴になり無罪釈放される。
序章 南平台の家-60年安保の渦中で 1960年6月 高峰三枝子邸 情けあるなら今宵来い 佐藤家と岸家 国木尋常小学校 寛子をおんぶして 血族の絆 岸家の嗣子 あてがい婚 一高から東京帝大へ 百家争鳴 上杉慎吉 北一輝への傾斜 第2章 縦横無尽 私服の「経済将校」 なぜ農商務省か 官僚優等生 アメリカに反感 家庭人の顔 満州事変 新国家建設 二・二六事件 満州派遣 満州産業開発5ヶ年計画 東条との蜜月 二キ三スケ(東条英幾・星野直樹・松岡洋右・岸信介・鮎川義介) カネは濾過して使え 第3章 東条英幾との相克-悪運は強いほどいい 怪物・矢沢一夫 企画院事件 松岡洋右の一分 東条内閣 悍馬の商工大臣 東条と岸 戦況悪化 サイパン陥落 東条内閣崩壊 悪運は強いほどいい 第4章 巣鴨拘置所での覚悟-「踊る宗教」北村サヨの予言 A級戦犯容疑者 「踊る宗教」北村サヨ 寛子の握り飯 娑婆への執着 なぜ、不起訴か 獄の内外 「獄中日記」 冷戦を読み解く 判決と出獄 第5章 CIA秘密工作と保守合同-冷戦を武器に接近したダレス 「うまい寿司でも食いたい」 「お玉さん」の覚悟 岸事務所開設 岸と吉田 GHQの内戦 「ニューズウィーク」とパケナム もっとも険しい道 川部美智雄 パケナム邸の極秘会談 天皇のメッセージ-ダレス文書 阿部晋太郎と洋子の結婚 岸、自由党から出馬 三木武吉の荒技 鳩山、悲願達成 パケナムの英語教師 日米会談の裏と表-ダレス文書Ⅱ CIAの「情報と資金」 保守合同へ 第6章 不退転の決意 安保改定の夜 情けあるなら今宵来い 石橋湛山内閣 岸新首相誕生 アメリカ訪問へ ゴルフ談義 日米首脳会談 アジア各国歴訪 冷戦激化の中での安保論争 警職法反対闘争 大野伴睦「念書」事件 安保条約調印と闘争拡大 「核持ち込み」事前協議 ふたつの悩み 強硬採決 「6.15」とアイク訪日中止 情けあるなら今宵こい 第7章 憲法改正の執念消えず 暴漢に刺され重傷 政治資金、賠償汚職の疑惑 隠然たる力 溌剌たる最晩年 岸の背中 浜田麻記子「隠し子」騒動 家郷の土に (ジョンレノ・ホツマ 2017年4月15日)
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音楽の歴史(改訳)/ベルナール・シャンピニュール著・吉田秀和訳(白水社 1969年初版 2004年第31刷 本体951円)
原題は“Histoire de la musique”、著者のシャンピニュールはフランス人で、クラシック音楽をより深く理解するために、音楽が開花した各時代と環境のなかで芸術、文学、宗教、経済、政治と関連させ、中世、ルネサンスを経て近代ヨーロッパ音楽が形成されていく過程を詳細に辿ったものである。 |
エッセイ |
人間の「賞味期限」と「消費期限」
(山勘 2017年4月14日) |